ジャンプ黄金時代の三本柱
スラムダンク
ドラゴンボール
そして幽遊白書。
作者はもちろん冨樫義博。
この二つに対して、幽幽白書は比べ物にならないくらいに知名度も評価も低い。
しかしこの二つと肩を並べて語られることが多いのはなぜなんだろう。
スラムダンクをLIKE,
ドラゴンボールをLOVEで表現するとするなら、
幽遊白書はADDICTIONだと思う。
冨樫には井上にも鳥山にもない何かを持っている。
今読み返すとほんと恥ずかしくなるようなシーンも多々ある幽遊白書ですが、
やっぱりおもしろい。
井上鳥山になくて冨樫が持っているもの
それは
「生生しさ」じゃないだろうか。
ある人が「色気」という表現をしていたけど
その匂いというか、温度というか、
とにかく人間のにおいが付いて回る。
それは冨樫という人間の匂いなのかもしれない。
冨樫はよくも悪くも、作品よりも「冨樫義博」本人について語られることが多い。
そしてアンチと信者が大きく分かれる。
その両極を惹き込んで大きな渦の中にのみこむ。
HUNTER×HUNTERが異例の連載をしているのが大きな証明になる。
冨樫という人間の、本来見せてはいけない部分まで
漫画から滲みだしてしまっているようで
今読み返してみると恐ろしい部分がたくさんあります。
当たり前のように少年誌に載っていたのかこれが。
あの頃冨樫の叫びに、どれだけの人間が気づいていただろう。
この漫画は、ただの物語ではなくて、
ただの娯楽漫画じゃなくて、
本当は誰も見てはいけないものがその絵にのっかっていたんじゃないのか
そんな気にさえなる
それくらい気合いの入った絵を冨樫は描いています。
全体を通してみれば、つじつまが合わなかったり、
結局仲間が死ななかったり、
幽助が魔族として生き返ったり、
めちゃくちゃなところはたくさんある
技の名前もカッコ悪いし
パクリだろって箇所もたくさんある
それでもひきつけてやまないのは、
きっとこういうところ。
とにかく敵が素晴らしい。
一人目、戸愚呂。
暗黒武術会での最後の決戦。
100%の力を発動させ、
圧倒的な力の差を見せつけてのひとコマ。
「元人間のオレの経験からみて
今のお前に足りないものがある」
「危機感だ」
「おまえもしかしてまだ
自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」
このシーンは、読んだときに高い所から落ちる時みたいな
ぞわっと胸のあたりが浮くような感じがする。
このセリフの意味はのちに戸愚呂の過去を知ることによって
より深みを増すことになる。
この言葉が持つ意味がとても悲しいことに
今になってやっと気づいた。
二人目、仙水忍
魔界の穴編に入ってからの富樫の線は細く繊細になっていく。
今では考えられないほど美しい線を描いている。
HUNTERの絵柄に慣れてみるとびっくりするほど。
そして人間の描写がより生生しく、皮一枚剥いだ内側に入っていく。
仙水が人間を否定するきっかけになった過去を語るひとコマ。
妖怪を売買する組織の壊滅に向かった仙水は
人間たちが欲望のままに妖怪を殺し、切り刻み、内臓を引きずり出している
酷悪の宴を目の当たりにする。
妖怪を倒すことが正義と信じて疑わなかった
価値観の崩壊
そして仙水はそこにいたすべての人間を殺した
仙水は本当に冷たく凍てついた表情で描かれている。
怒りや憎しみではなく
湧き上がるような嫌悪感と確固たる意志
冨樫は仙水に自分の気持ちをしゃべらせていたのかもしれない。